整形外科:膝関節疾患
膝関節疾患
膝前十字靭帯損傷(ACL損傷)
膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament: ACL)損傷を放置したままスポーツなど負担の大きい活動を行うと、すねの骨が前にずれて膝くずれを生じ、膝くずれを繰り返すことにより、膝関節の中でクッションの役割を果たす軟骨や半月板の二次損傷を引き起こし、長期的に膝の軟骨がすり減り、骨まで変形してしまう(変形性膝関節症)こともあります。 前十字靭帯は自然に治癒する可能性は低いため、スポーツや活動性の高い業務への復帰を目指す方、また日常生活でも膝くずれを繰り返す方では機能障害の改善のために靭帯を作り替える手術(靭帯再建術)をお薦めしています。 【前十字靭帯再建術】 再建術とは、損傷した靭帯の機能を再現するために靭帯の代わりの材料としてご自分の太ももの裏の筋肉(ハムストリング)の腱や大腿四頭筋腱を移植腱として用いる再建術を関節鏡下に行っております。 術後約3〜4ヶ月でジョギングが開始でき、ランニングやステップ動作を段階的に確認して術後約6〜8ヶ月からスポーツに関連した動作を開始、スポーツに完全に復帰するまでは8〜12ヶ月程度かかります。
半月板損傷
半月板は膝関節の中で大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある組織で、骨や骨の表面を覆う軟骨にかかるストレスを減らす「クッション」の役割をしています。また、膝の骨同士の動きを安定させる働きもあります。 スポーツで損傷することや、年齢とともに半月板の弾力性は失われ少しずつ擦り切れるように損傷することもあります。 症状が改善しない場合、痛みやひっかかり感が強い場合などは手術を考慮します。 手術は関節鏡を用いて可能な限り半月板を温存できるように半月板の損傷した部分を縫合し修復することを目指して手術を行っています。
変形性膝関節症
関節軟骨が変性し弾力性を失い、徐々にすり減って膝の痛みや機能障害(曲げ伸ばしがしづらいなど)を生じる疾患です。最終的には軟骨だけでなく骨の変形を生じてしまいます。主な症状は膝の痛みと水がたまり腫れること、変形です。現時点では一度変性した関節軟骨は元の状態に戻すことはできず、軟骨のすり減りは徐々に進行してしまうことがほとんどです。薬物治療や関節内注射で痛みが緩和されずに生活に支障をきたす場合には手術治療を行います。状態に応じて主に以下の手術を行っております。 高位脛骨骨切り術(HTO) 軟骨のすり減りが膝の内側だけに限られ、O脚に変形している患者様に行います。内反(O脚)変形を矯正して、体重のかかる部位を外側にずらすことで内側にかかる負担を軽減し、痛みを改善させます。自分の関節を温存できるため、可動域が保たれ、違和感が少ないという長所があります。
人工膝関節全置換術 人工膝関節単顆置換術 軟骨がすり減って変形してしまった関節部分を切除し、金属とポリエチレンでできた人工関節に置き換える手術です。変形の程度によって内側または外側だけで済む単顆置換術を行います。
全体的に変形が強い場合や膝の可動域(曲げ伸ばし)制限が強い場合には全置換術をします。高い除痛効果と膝関節機能の改善が得られ、耐久期間も長いといった長所があります。
軟骨損傷
膝関節内で骨の表面は滑らかで弾力性のある関節軟骨という組織に覆われています。外傷や加齢による変性、成長期に特有な骨軟骨障害(離断性骨軟骨炎など)により軟骨損傷が起こります。 軟骨は非常に修復されにくい組織ですので、損傷範囲が小さければ手術的に軟骨の修復を促進する治療(骨髄刺激法、マイクロフラクチャー法)や、中等度の大きさでは他の部位の正常軟骨を損傷した部分にもってくる治療(骨軟骨柱移植術、モザイクプラスティー法)を行っています。