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脳卒中に関して


くも膜下出血、脳内出血(脳溢血)、脳梗塞の3者を総称して「脳卒中」と言います。これは文字通り、「突然発症」することが大きな特徴・原則です。現在脳ドッグなどの予防的医療の発達により無症状なものが発見されることはありますが、それは決して全てがそうなのではありません。だから救急車で搬送される患者さんも多くいるということになるのです。
交通事故にたとえると少しわかりすいかもしれません。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をきちんと治療すること、酒を控えること、喫煙をやめること、肥満にならないこと、これらは「安全運転」に相当します。しかし、安全運転していても誰かが当たってくることがあります。それが「病気」でありその中に「脳卒中」もあるのだと思います。
事故に遭遇したときどうしますか?早い処置が必要で望まれるのはもちろんです。ただ、時間が1時間はやければその分良くなる、というものばかりでもありません。そういう意味では発症時に決まっている側面があります。発症時に具合が悪ければ悪い結果が多く、軽ければその分回復もよいということは当然です。そういう中で、どのようにすればよりよい結果を望めるか、実現できるのか、それを我々は考えています。
治療というものには2つあり、1つは保存的治療といって、手術などの操作を加えずに管理する治療(点滴、薬、安静、リハビリなど)と外科的治療とがあります。この外科的治療が脳神経外科で行うものです。現在、外科的治療には2つの流れがあります。ひとつは従来の方法で開頭手術というものです。もうひとつは脳血管内治療といって、頭を開けずに血管の中から治療するものです。この2つは目的が同じでもアプローチは全く異なります。後者はうまくいきさえすれば低い侵襲で治療ができ、非常によい治療である反面、合併症は激烈であり、また、その適応判定には適正な目と検査が必要です。患者が治療を考える場合、これらの検査を経て、どちらが可能でより安全であるかをよく聞いてもらい、判断してもらうことも必要です。当院では双方の治療の観点からお話することが可能です。気になるようでしたらよく聞いていただいて構いません。脳血管内治療は、画像の読みと、「血管内治療が可能かどうか」を判断できるかどうかが重要です。




当院で使用可能な、脳血管内治療におけるdevice




くも膜下出血(または脳動脈瘤)


これは、脳血管に動脈瘤という異常な膨らみができ、これが破裂することにより発症します。出血した場合、再出血を防止することがその後の治療のスタートとなります。ここに外科的治療が用いられます。開頭クリッピング術と脳血管内治療がその中の2大治療法です。どちらの治療でも無事行きさえすればよいのでしょうが、頭を開けないという点で、血管内治療を希望する人も増えています。
血管内治療を行う場合には、脳血管撮影という検査は必須となります。どちらかといえば、開頭に比べて血管内治療は適応に制限があり(動脈瘤の大きさ、形、周囲正常血管との関係などが影響)、脳血管撮影により詳細な検討をする必要があります。適応の決定に際しては綿密な検査とそれを見る目が必要です。もちろん開頭手術をするとしても脳血管撮影は必要だと思いますが、要は、2つの治療いずれが可能か安全か、という大事を判断するには脳血管撮影は避けて通れないものだということです。

手術が問題なく終わるという前提で考えると、血管内治療の方が体への侵襲は少なく、これで済むものであればこれで、という考え方は無理のない考え方かと思います。反面、合併症は時として、開頭に比べて遠隔操作であるがゆえに、起こった場合には重篤になる可能性もあります。従って、この治療は開頭手術のBackupが絶対に必要です。

くも膜下出血は特殊な病態を含んだ疾患であり、発症、急性期の手術だけで治療は終わりません。その後に脳血管?縮や水頭症などといった病態があり、これらを潜り抜けてはじめて治療が終わるという疾患です。単純に、無事快癒するというものが1/3、明らかな後遺症を残すもの1/3、重篤または死亡に至るもの1/3という具合に捕らえるとそんなに間違いがないと思います。




未破裂脳動脈瘤


くも膜下出血の原因である脳動脈瘤が破裂前に何らかの検査で発見された状態です。多くは無症状であり、症候性は稀です。破裂率は年間0.5%から2%程度とされていますが、破裂した場合にはくも膜下出血となりますから、確率が低いから大丈夫と早合点することはできません。また、小さいものは破裂しにくいと言われますが、当施設では1.5mm,2mm大のものが破裂して搬送されてきた症例も経験しており、単純に大きさだけで判断はできません。
いろんな要素があるため、実際には患者さん自身がどう感じるか、という点も重要だと思います。動脈瘤があるというだけで日常生活が精神的に制限されては困りますし、治療すればおしまいという簡単なものでもありません。動脈瘤の部位、大きさ、正常血管との関連、静脈のタイプなど、多くの因子が治療の難易度を決定します。

従って、患者さん毎によく精査をして、どのような治療ができるか、どのような方法でするのが安全か、何が起こりうるか、など、想定できる範囲を十分検討して治療に当たる必要がありますし、患者さん自身も素人なりによく話を聞いて考えてもらう必要があります。その結果、治療をしても経過観察をしても、自分なりに納得がゆく選択をすればよいのだと思います。

経過観察を希望する人でよく「ぽっくり逝けばいいや」という発言をする人がいます。それはその人の考え方ですから構いません。しかし、「ぽっくり」逝けるだけとは限りません。脳の病気は患者自身の意識がなくなってしまうことが多くあり、死んでいない状態(要は寝たきり)で助かってしまうこともあります。そういうときに患者を支えるのは家族(または患者にとって近しい人)である、ということがあります。自分は何ひとつわからない状態になって周囲に大変な労苦を負わせる可能性もありますから、そうなったときのこともよく考えて、万が一発作に襲われた際のことを自分とその周囲とで相談しておく必要があります。
これは何でも治療したほうがいい、ということではなくて、いろんなケースが想定されますから、自分の選択した道をよく認識して考えておくことが肝要だという意味です。

当院で行っている動脈瘤に関連する主な外科治療(くも膜下出血を含む)


  • 脳動脈瘤頚部クリッピング術
  • 脳血管内治療(動脈瘤コイル塞栓術)
  • 脳血管攣縮に対する経皮的脳血管形成術
  • シャント手術(脳室-腹腔、腰椎-腹腔)




脳内出血


くも膜下出血が脳表の動脈瘤からの出血で、脳の外側に出血が回るのに対し、脳内出血は最終血管(毛細血管の手前という感じ)からの出血で、これらの細かな動脈は脳の中に存在するため、脳の中の(脳内)出血になるというわけです。これはくも膜下出血のような強い頭痛というよりは、血腫のできたところの脳機能を著しく損なうことから運動麻痺や失語(言葉がわからない、話せない、という症状)などの局所症状で発症します。当然意識障害を伴います。左右、部位、血腫の大きさにより症状はさまざまです。麻痺などの症状が出てしまうため、多くが後遺症を見える形で残すことが多い疾患です。麻痺がある場合には積極的なリハビリテーションが必要です。

また、脳内出血の患者さんは、妙に不健康な方が多く、胃潰瘍、大腸潰瘍、肺炎など、頭以外の合併症にも比較的多く遭遇します。この疾患の多くが動脈硬化や高血圧に起因することが多く、要は血管の老化が引き起こすものであるとするならばそれは「なるほど」という感じもします。普段の「生活習慣病」への対応がいかに大切か、考えさせられる疾患です。
この疾患はその多くが動脈からの出血です。高血圧性などのほかには、動脈瘤、脳動静脈奇形、脳腫瘍、アミロイドなど、少数派ですがなんらかの血管異常を持っている場合があり、入院中に頭部CT, MRI, 場合によっては脳血管撮影などを行ってこれらの異常の有無を検索します。その結果、血管系の異常が明らかでないものに対し「動脈硬化や高血圧に起因する」脳内出血、という診断をします。

当院で行っている脳内出血に関連する主な外科治療


  • 開頭血腫除去
  • 定位的手術(駒井式)
  • 出血源として具体的な異常(血管奇形など)がある場合にはそれに対する治療




脳梗塞


言葉では1つですが、この原因はさまざまです。脳出血が「血が出る」のに対し、脳梗塞は「血が止まる」「血管がつまる」など逆の状態で発症します。つまるためには

  1. 血液が固まる、血栓(血の塊)が流れてきて血管がつまる
  2. 血管が細くなるまたは閉塞する
  3. 全く別の原因(体に異常を来たす疾患、病態-悪性の癌、血液疾患など)


の3つがあるでしょう。3.は置くとして、1.は血液がどろどろであったり、心臓または頭にくる途中の血管で血栓ができてきたり、ということがあり、2.は主には動脈硬化により長年かかって血管が細くなるというものです。原因となる場所(血栓ができる場所、細くなる場所)は心臓から頭の途中、どこにあっても構いません。従って、脳梗塞というのは結果として脳が梗塞になるのであって、原因は頭だけではないということになります。原因別に、画像(CT, MRIなど)所見はそれなりに特徴があり、ある程度推測は可能です。

また、脳梗塞の特徴として、原因となる所見はかなりなものなのに本人は意外にけろっとしていて重症感がない、ということが時としてあります。それは、人間の脳には予備能力というものが作用しているからになりますが、ひとたび梗塞で強い麻痺などの症状が出てしまえば高度な後遺症につながり、治療はリハビリテーションしかない、ということにもなります。症状が強いと当然後遺症が強く残る確率も高くなりますので、予備能でカバーされているうちに治療を行う、ということもあります。
その適応に関しては見た目が比較的元気である以上、患者本人やその周囲がどう考えるか、というところも大きいと思います。

脳梗塞の外科的治療とは、その患者さんが脳梗塞に陥る可能性のある血管異常(多くは動脈硬化性)を持っていて、それが外科的に治療可能なものである場合に、予防的に行うものです。症状が軽いか、またはないうちに異常が見つかった患者さんが適応となります。一度半身不随になればその段階で梗塞脳は回復しないため、外科的治療の出番はなくなります。従って、出血性の疾患と治療の趣がまったく異なります。

当院で行っている脳梗塞に関連する主な外科治療


  • 経皮的頚動脈ステント留置術
  • 頚動脈内膜剥離術
  • バイパス手術(バイパスはいくつかの種類があります)
  • 経皮的脳血管形成術(頭蓋内)




特殊な脳関連疾患


  1. 脳動静脈奇形(AVM)
  2. 硬膜動静脈瘻(dural AVF)
  3. 脊髄動静脈奇形 (Spinal AVM, AVF)


1は主に出血発症(くも膜下出血や脳内出血の形式)のものが多いかと思います。また、2の場合は単なる耳鳴りや痴呆、目の充血という症状で発見される場合もあります。3は、めったに遭遇しませんが、徐々に進行する歩行障害などでみつかることがあります。
動脈と静脈とのつながりに異常を持っている疾患であり、これらが疑われた場合、脳血管撮影という検査は必須となります。これにより、疾患の血管構造を詳細に、かつ正確に把握する必要があります。治療としては、これも外科手術と血管内治療とがあります。ただ、1.のAVMについては両者を合わせた治療が必要になることがあります。

1.脳動静脈奇形(AVM)


脳内の動脈と静脈とが「ナイダス」というAVM本体を介して直接つながるため、静脈に動脈血が直接流入し、脳出血などをきたす疾患です。サイズや発生部位により治療内容は変わりますが、脳血管内治療により病変を「塞栓」し、流れを少なくしてから開頭で摘出する、または放射線治療を行う、という方法が一般的です。AVMの血管内治療には、コイル、NBCA(アロンアルファの生体用のもの)、ONYX(最近認可された塞栓物質)といった塞栓物質が使用されます。AVMは複数の治療方法が合同で必要となる疾患です。

2.硬膜動静脈瘻(dural AVF)


脳を包む硬膜という膜がありますが、この硬膜上で動脈と静脈とがつながってしまう疾患です。
これの厄介なのは、硬膜だけで済めば良いのに、動脈から静脈へ流れる血流が、脳表面の静脈などに逆流するため、脳出血、脳梗塞などの脳卒中で発症することがあること、症状が多彩(耳鳴り、目の充血、複視などの眼症状、認知症状、頭痛、など)なため、患者さんが脳外科を受診せずに診断が遅れることがある、ということです。治療は発生部位やその血管構造により種々ですが、多くは血管内治療での対応が可能で、時に開頭術がbetterなものがあります。

3.脊髄動静脈奇形 (Spinal AVM, AVF)


上述の1.2.が脊髄にできると考えればよいでしょう。AVMも少ないですが、脊髄のものはさらに少なく、サイズは脳よりも一桁小さくなります。診断にはCT, MRIは当然ですが、最終的な解析には脊髄血管撮影が必要になります。脊髄血管撮影は経験しているDrも脳ほどには多くなく難易度も高いので専門性が高い領域になります。中高年の患者さんでは脊髄硬膜動静脈瘻 (Spinal AVF)の方が多いと思われますが、原因不明のくも膜下出血の中にこの疾患のあることがあります。また、数か月や数年の間に進行する歩行障害、膀胱直腸障害で見つかるケースもあります。

これらの疾患は、1.はともかく、2.3.は多くないため、脳外科医であればだれでも診断、治療ができるとは限りません。脳血管撮影の読影がとても重要で、この領域は血管内治療抜きには治療を語れない側面があります。このような疾患も当院では対応可能です。




その他


外来レベルで最も多いのは「頭痛」ですが、これらのほとんどは神経学的には問題のないものが多く、「頭が痛い」が、脳には異常がないものが大半です。肩こり頭痛や偏頭痛などいろいろありますが、肩こりであれば仕方がないと思われても、それが頭に広がるとなぜか不安になる、それは頭だからだと思いますが、頭部CT, MRIでは異常のないことが多く、基本的には内服のみでfollow-upとなることが多いです。

最後に、脳卒中というのは最初に書いたように「突然発症」を原則とします。だから、脳ドッグで異常がないから自分が病気にならない、というのは間違いです。「健康診断を受けていたのに」「2日前にCTをとったのに」などということは時に遭遇します。しかし、それこそ悪いくじに当たったかのように、その方に病気が訪れることがあります。さまざまな検査、健康診断などは「安全運転」だと思ってください。それでも病が来ることがあります。
しかし、だからといってそれを恐れてもそれは無意味であり、交通事故が怖いから家から一歩も出ない、ということと同じです。そのような、時として自らを襲う病が来るというのは、1回病気をした人でも、健康な人でもその可能性は同じであり、徒に恐れても埒があきません。「安全運転」という、自分のできることをきちんとやった上で、それで来るものは仕方がない(といっては良くないのでしょうが)という感覚も少しはもって、無用な不安を抱かないことが肝要です。
病気になったら戦う必要が当然ありますが、病気になる前から病気になっても仕方がありません。やれることをやって、日々平穏な心で生活ができればこれほど良いことはないと思います。




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